「魚への負荷は軽く、飛距離も出る」新しい遠投カゴの開発(1)

1.お知らせ 
 こんにちは! 一平です
読者さんからの指摘で、一平のブログの「ホームページのコメント欄」にコメントを投稿したが届かなかった。というクレームがあり、調べてみたらその通りでした。「記事のコメント欄」は、正常に動いています。原因がよく分からなかったので、ホームページのコメント欄はとりあえず消去しました。
こちらに今までコメントをくださった方には、心よりお詫び申し上げます。
また、コメントにはいろいろな考え方があったり、忙しくて返信が遅くなった時などがあります。そのような中で、返信していないものがありますので、どうかご了承のほどお願い申し上げます。
また、ホームページの記事はパソコン画面では正常に配置されているのに、スマホでは記事と記事の間隔が大幅にあいていたり、表示されていないものもありました。
これも修正をしました。さらに、今までは要約記事にアイキャッチ画像を挿入していませんでしたが、これを作成したので「NO IMAGE欄」に小さな写真が掲載され、見やすくなったと思っています。

さて今回が69回です。いよいよ「魚への負荷は軽く、飛距離も出る」新しい遠投カゴの開発に取り掛かりました。こんなコンセプトの遠投カゴは、一平は今までに見たことがありませんので、ワクワクしています。
「たかが1000円程度のカゴ、されどカゴ」の開発に挑戦です。
それをこれから報告します。

写真ー1 淡路島、岩屋港のアジ釣り(2022年1月29日)

2.新しい遠投カゴ、検討のきっかけ
 オモリは軽い方が良く釣れます。しかし、遠投カゴ釣りで、遠くにカゴとウキを飛ばすにはオモリは重い方が良く飛びます。
両軸遠投カゴ釣りで、軽いカゴを遠くに飛ばすため、道糸にPEを使うことをかんがえましたが、「晴れ、とっきどき釣り」第68回で報告したように
現状の長い遠投竿では、PEの糸が時々ガイドに絡み、道糸のタカ切れやバックラッシュが起こり、安定的な遠投をすることは難しいことが解りました。
原理的にみても、両軸リールでは、オモリが道糸を引っ張るというよりも(もちろん引っ張っているのですが)リールのスプールが回転し道糸を送り出していますので、腰のない糸のようなPEでは糸を連続的に押し出すことは難しいことが解りました。

3.新しい遠投カゴ、開発
 そこで一平は、魚に掛かる負荷は軽くて、遠くに飛ばせる遠投カゴを考案したいと考えました。
新しい遠投カゴの開発に挑戦です。
目標は、
・ 遠投カゴとウキをできるだけ遠くに飛ばし(80m位)
・ 水中でのカゴ全体の重さは6~7号程度(22g~26g)に抑えるカゴを作ることを考え
  ました。(現状のカゴの半分程度の水中での重さ) 魚への負荷を考えると軽ければ軽
  いほど良いのですが、6~7号程度にしたのは、これより軽すぎるとカゴの沈降速度が
  遅く、撒き餌やエサが深い棚に届くまでに時間がかかりすぎるからです。

何日も考えた後、
 次のようなことを思いつきました。

  ① 小さな石ころをカゴに入れて投げる。カゴが着水した時に石ころは海に落ちる。
    こうすれば、投げるときに重さはあるが、水中ではカゴは軽くなる。

  ② 撒きエサを多く詰められるカゴとする。撒きエサが海中に放出されれば、重さはな
    くなる
  ③ カゴに水(海水)を入れて投げる。海中では、カゴの中に海水が入ってくる構造と
    する。
  ④ 上カゴに大きな浮力体を入れる。(水中でのカゴが軽くなる)
  ⑤ 比重が1に近いプラスチックをカゴに詰めて、カゴを重くし、水中での重さはなく
    する。
    あるいは下カゴを、比重が1に近いプラスチックで作る。
    いずれも20g近く重量を増やし、それらの水中での重さは0gとする。

次々と考えが浮かんできました。さて、具体的な開発案を考える前に、現状の自分のタックルのバランスについて把握しておく必要がありそうです。

4.現状のタックルバランス
 皆さんは、自分のタックルのバランスについて考えたことがおありでしょうか。
ウキやカゴはそれぞれ「気に入ったデザインのものを使っているだけだ」とおっしゃる方が多いのではないでしょうか。
一平の現在よく使っている遠投カゴ釣り用のタックルは、図―1の通りです。
ウキは渚の遠投師製、埋め込みタイプ10号、遠投カゴはサンナ12号カゴを少し改良したもの、天秤は自作です。浮力測定方法は「晴れ、とっきどき釣り」第64回を参照ください。

図ー1 一平のタックル一例

図ー1 一平のタックル一例

図―1の一平のタックルでは

・魚がエサをくわえてウキの先端まで沈めるためには、ウキの残浮力50g(オモリ13.3号相
 当)以上の力が必要です。 
・魚が、遠投カゴと天秤を水面方向に持ち上げるのに必要な力は、水中での重さ46g以上(オモリ12.3号相当)が必要です。 
                                          
いずれにしてもエサをくわえて動く魚にはオモリ約12~13号以上の力が魚に掛かります。 
以上としたのは、魚が斜めに走るともっと大きな力が必要だからです)

5.新しい遠投カゴのウキ選定とカゴの目標値
 そこで目標は、遠投カゴと天秤の重さ(投げるときの重さ)は現状の約80gのままにして
 ・ウキの残浮力が、オモリ6~7号相当(現在のタックルの約1/2)となるようにする。
  現状のウキの残浮力 50gを ➡ 6~7号(22.5g~26.5g)とする。

 ・同時に、遠投カゴと天秤の水中での重さがオモリ6~7号相当となるようにする。
  現状の遠投カゴと天秤の水中での重さ46gを ➡ 6~7号(22.5g~26.5g)とす
  る。
 ことにしました。

目標『魚がウキを沈めるのに必要な力と、海中の仕掛けを持ち上げるための力』を現在の1/2に定めたのは、特別な理由があるわけではありません。
どれくらいの重さならば、魚にとって負担なくエサをくわえることができるのか、魚の種類によっても魚によっても変わると思われます。

現在、20㎝程度の真鯛がかかった時でも、ウキは「スポン!」と綺麗に消し込みますから
それほどシビアに考える必要はないのかもしれません。
しかし、オモリは軽ければ軽いほどよく釣れると言われていますし、このことは多くの釣り人が身をもって経験しています。
それでは、水中での重さをもっと軽くしたらどうかと考えがちですが、釣り方法によって
これも異なり、それぞれに合った方法を考えねばなりません。

事前の実験で、現状の遠投カゴに浮力体を入れて、水中での重さを5号程度とすると
遠投カゴの沈降スピードが、急に遅くなってしまいました。
これでは8~10mの棚に、遠投カゴが到達するのに時間がかかりすぎると考えました。
もちろん軽すぎると、カゴは潮の流れにも弱いので、流れの速い場所では釣りづらいと考えたわけです。
そこで、遠投カゴと天秤の水中での重さは6~7号程度は必要だと考えました。

6.新しい遠投カゴ試作
 目標が明確になったので、いよいよ具体案の検討です。さて
「3、新しいカゴ開発」の項で以下の5つの案を提案しました。

① 小さな石ころをカゴに入れて投げる。カゴが着水した時に石ころは海に落ちる。
 こうすれば、投げるときに重さはあるが、水中ではカゴは軽くなる。
② 撒きエサを多く詰められるカゴとする。
③ カゴに水(海水)を入れて投げる。海中では、カゴに水が入る。
④ 上カゴに大きな浮力体を入れる。(水中でのカゴが軽くなる)
⑤ 比重が1に近いプラスチックを使い、投げるときの重量を約20g程度増やし、それら
      の水中での重さは0gとする。

①は今回の開発の目標を分かりやすく、明確にするための説明用提案でした。
開発を進める場合、最も大事なことはその目的を分かりやすく説明することです。
一平は、現役時代に会社の上司や社長などに開発の目的と効果を説明するために一番時間を使っていました。何よりもお金を出していただくわけですから・・・

②はエサ代があまりにも高くつきますね~
今回の①と②の提案は、周辺環境への配慮や経済的な観点から現実的ではありません。
従って、③、④、⑤について順次検討をしていきたいと思います。

6.1 水遠投カゴの試作(3項の③案)
 (1) 水の入るボックス部、構造と材料 
水中での遠投カゴの重さを軽くするために
・遠投カゴの一部に、水の入るボックス(部屋)を作る。
・遠投カゴを投げる直前から着水するまでは、大部分の水がカゴの中に留まっている。
・着水後は、海水がボックス内に入り込んでくる。

構造とします。こうすれば、投げるときは水の重さが加わり、重いものを投げることにな
りますが、海水中では水の重さはなくなります。
そして、カゴの形状、材料としては
・先端が鋭い方が良く飛ぶ
・水を入れるボックスは、プラスチックがよさそうだ。
・先端部分に錘(オモリ)を入れる必要がある。
等を考慮すると、すぐにプラスチックのサビキカゴが思い浮かびました。
これは特に安価なので(DAISO 110円/2個入り)良いと考えました。

図―2に使用するサビキカゴを示します。

図ー2 市販のサビキカゴを先端部に流用

図ー2 市販のサビキカゴを先端部に流用

(2)遠投カゴ本体の構造と材料 
 遠投カゴ本体は、一から作るのは大変なので(一平は下手なので)市販のカゴを流用します。水とオモリを収容するボックスを新たに付け加えるので、できるだけ短い遠投カゴを流用したいですね~。
「晴れとっきどき釣り」第46回で報告した通り、
・KAIKO(海幸)のアッパーロケットミニは、一平が調査した遠投カゴ11種類の中でも二
 番目に短く
・すべての部品が壊れることなく簡単に分離でき、
・他のカゴに比べて低価格(約800円)

なので、このカゴを流用することにしました。

図-3に、使用するアッパーロケットミニカゴを分解したものを示します。
アッパーロケットミニは、図―3のようにすべてが簡単に分解できます。

図ー3 アッパーロケットミニ 遠投カゴ 分解図

図ー3 アッパーロケットミニ 遠投カゴ 分解図

図―3の購入品分解図の内、使用するのは
 上カゴ、下カゴ、下カゴ用錘(オモリ)、ゴムストッパーの4種類のみです。

余談ですが、一平はこのカゴを使うときには、上カゴの浮力があまりに少ないので、上下カゴの分離をよくするために、木材でできたビーズ(DAISOのウッドビーズラウンド、21個入り110円)を挿入して使っています。

さて、材料が整いました。
まず先に、どんなカゴになるかをイメージしてもらうために、これらを使って試作した
「水遠投カゴ」(一平が勝手につけた名前)の試作品から紹介します。 

図―4、に水遠投カゴとその構造を示します。

図ー4 水遠投カゴ構造

図ー4 水遠投カゴ構造

この試作品のカゴの全重量は58gです。浮力は34gなので、水中でのカゴの重さは24gです。
水を入れるボックスには18g~20g程度の水が入ります。(ボックスには約22g程度の水が入りますが、下カゴをボックスに押し付けると、少々の水がこぼれるので約18g~20gとなります。)
従って
① 魚がエサをくわえて、ウキを沈めるのに必要な力は、ウキの残浮力以上なので
  ウキの残浮力=ウキの総浮力―水中でのカゴと天秤の重さ
         =ウキの総浮力―(24g + 3g
   ウキの残浮力を6~7号オモリ相当(約22g~26g)に設定すれば、
  ウキの総浮力=(22~26g)+(27g)=49~53gとなります。

 ② 魚がエサをくわえて、遠投カゴと天秤を水面方向に引っ張り上げるのに必要な力は
   カゴと天秤の水中での重さ以上なので、24g+3g=27g以上となります。(オ
   モリの号数約7.2号相当)3gは天秤の重さです。

従って、まず総浮力が12号~13号のウキを選びます。(ここで注意が必要です。店頭で表示されている公称12~13号のウキではありません。あくまで総浮力が12~13号のウキです)
渚の遠投師製、埋め込み式ウキの10号は総浮力25.6号(96g)もあります。
なぜ、ウキの10号が、総浮力25.6号もあるのか理解に苦しみます。
メーカーの言うとおりだとすれば、10号の遠投カゴは水中で10号の重さを持っていることになります。すると魚が針をくわえて、底に潜ろうとすると(25.5-10)号以上の力を出さないとウキを沈めることはできません。15.5号は、約58gにもなります。
「それでも魚は釣れる」のであまり問題ないのかもしれません。しかし、魚にしても軽ければ軽いほど食いつきやすいのは確かです。

「晴れ、とっきどき釣り」の第63回で述べたように、各メーカーの遠投カゴ釣り用のウキは非常に大きな総浮力を持っています。釣ることよりも「遠投性能」の方を優先しているみたいです(笑)
但し、我々の方にも問題があります。「魚に負荷が軽い」ウキよりも「よく飛ぶウキ」の方が良く売れると思いませんか? ゴルフのドライバーで「真っ直ぐに飛ぶドライバー」より「よく飛ぶドライバー」と宣伝した方が良く売れるのと同じですね~

さて、総浮力12号のウキとこの水遠投カゴを使えば、魚がエサをくわえて自由に動く時、魚に掛かる力は約7号オモリ相当(約26g)以上となります。
現在の一平のタックルでは、これが12~13号オモリ相当(45~49g)以上ですから約1/2となりました 。
これでやっと目標とするカゴとウキの具体的な構造や材料、考え方が明確になりました。

(3)製作方法詳細 
 次に新しい遠投カゴの具体的な製作方法について紹介します。
まずは水入れボックス部の製作です。
サビキカゴは2個必要です。製作方法の詳細は、図―5に示す通りです。

図ー5 水入れボックスの製作方法

図ー5 水入れボックスの製作方法

次は、この水入れボックスとアッパーロケットミニとの、ドッキングです
これを図―6に示します。

図ー6 アッパーロケットミニと水入れボックスのセット

図ー6 アッパーロケットミニと水入れボックスのセット

Bカゴの円錐部分の4つの穴には、水漏れ防止用のテープを貼り付けます。
内部、外部の両方から貼り付け、水漏れのないようにします。
Aカゴは4つの穴の内2つのみに水漏れ防止用テープを貼り付け、接着材で強固に固定します。
Aカゴの意味は、簡単にはBカゴ内部の水が漏れないようにするためです。Aカゴの上
(ラッパ部分)から水を入れるため小さな2つの穴は残しておきます。

その後、AカゴをBカゴに押し込んで接着し、水入れボックス部の円筒部分に黒色の布テープを巻きつけます。これは水漏れ防止用と強度アップの効果を狙ったものです。
これらを1.6mmφのSUS芯棒に通して両端を加工し、最後に青色の塗装をして完成です。

図―7に、水遠投カゴの完成品とその寸法図を示します。

図ー7 水遠投カゴ詳細図

図ー7 水遠投カゴ詳細図

新しいカゴの長さは134mmです。もう少し多くの水を入れるとなれば、少し長くなります。芯棒の先端から先端までの長さは、任意に製作できますが、現在は約185mmです。

図-8に水遠投カゴの水入れボックス部の詳細を示します。

図ー8 水入れボックス部、詳細

図ー8 水入れボックス部、詳細

①、②、はサビキカゴを流用しています。③は、別のサビキカゴの先端部(テーパー部分)
を切り取って流用しています。③は、単に円筒部から水がこぼれにくくするために入れていますので特に寸法にはこだわりません。
H1寸法は、任意で遠投かごを重くしたいときは長くします。
①、②は本来は1つのケースでOKなのですが、サビキカゴを流用したため2つとなっています。図-8には7号オモリを入れた場合の寸法を示しています。

また、図-9は他のカゴ(12号)との大きさの比較を示します。

図―9 他のカゴとの比較(12号)

図―9 他のカゴとの比較(12号)

Aは、VIPプロジェクト 海神Ⅱカゴ ピンク12号
Bは、SANNA(サンナー)遠投アシストカゴ
Cは、今回試作した新しいカゴ
Dは、渚の遠投師製遠投カゴ
Eは、ピアレ遠投カゴ                     です

水を入れて投げるという新しい機能を追加したので、やはり少し大きくなりました、少し太っちょの様です(笑)
水を入れて投げる遠投カゴは、一平は今までに見たことがありませんので、特許出願が可能ですね~。キャッチフレーズは、「魚への負荷は軽く、飛距離の出る新しいカゴ」がいいですね。
しかし今日ここで、ブログで発信しましたので、「新規性」がなくなって、残念ながら特許の権利は無くなってしまいました。(笑)

実際の遠投カゴ釣りにおける「真鯛の釣り」では、ウキがスポッ!と消えることが多く、ウキが横に寝る動きは、ほとんどありません。ということは魚はエサをくわへて下方や斜め下方へ潜る方が断然多いと考えられます。従って、実践的には今のオモリの重さはそのままで、できるだけウキの浮力を落とす(ウキの号数を下げる、ウキを削る等)だけでウキの感度はアップし、魚の食い付き効果はアップすると考えられます。

まだまだ、報告したいのですが、あまりにも長くなり誰にも読んでもらえなくなりそうで
次回にこの続きを報告します。

次回(第70回)は、このカゴを実践した結果を報告します。
 水漏れの状況や、遠投性能、魚の食い付き状態が変化したことなどを報告します。

                    2022年2月   一平

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