遠投かご釣り用、ウキの検討
こんにちは! 一平です。
皆さんの中には日々、試行錯誤を重ね、色、材質、大きさ、形状を工夫し、ウキの沈む瞬間を思い浮かべながら、丁寧に心を込めてウキを試作されている方も多いのではないでしょうか。近年、釣り具の進歩は目覚ましいものがありますが、唯一進歩から取り残された感があるのが「ウキ」と言われてます。
その分、自分用のウキは、自分の釣りを主張する大事な道具でもあります。
ウキには数多くの種類があります。
例えば、波止からの海釣りに限っても「繊細な当たりを取るウキ」「波浪中での安定性が高いウキ」「引き込まれる際の抵抗が少ないウキ」「視認性の高いウキ」「竿の振り込みが容易で、糸がらみせず、竿に乗りやすいウキ」などいろいろにその場所、釣り方によって要求されるものが違うし、一個の価格も安いため、なかなか進歩してこなかったと思われます。
今回は、遠投かご釣り用のウキに限定し、いろいろ検討した結果を報告したいと思います。遠投かご釣りで狙う魚は、主に青物、真鯛、スズキ、イサギなどです。もちろん他の魚も釣れますが割と対象が絞られていて、これらの魚は、スパッとウキを消し込みます。
「前触れアタリ」を取る必要がなくて、残浮力(余浮力)についてもそれほどシビアに考えなくても良い魚たちです。従って遠投かご釣りのウキに求められる要素は主に、「風や波浪中での安定性」「飛距離」「視認性」などです。
1、遠投かご釣り用、ウキの比較
写真―2に、遠投かご釣りによく使われる5種類の代表的な遠投ウキを示します。(10~12号ウキ)これらはいずれも、超遠投用ウキとして一般的には50m以上の遠投用に使われるウキです。
表ー1に、これら5種類のウキ(10~12号用)の長さ、重量、価格を示します。
1)ウキの長さ、重さ、価格比較
表―1より、5種類のウキの内一番長くて、一番重いのはアポロウキで29.4㎝、14gです。一番短いのは、渚の遠投師ウキ(埋め込みタイプ)の22.6㎝、そして一番軽いのがカゴ釣り研究会製のウキ(HEU-11Y)10~12号用で10gです。
価格は、2021年2月現在で、900~1300円くらいであり、とびぬけて高価なのがPIAREのウキで2.600円、最も安価なのが渚の遠投師製(埋め込みなしタイプ)で900円程度です。
但し、価格はネット通販でばらつきがあり、購入には注意が必要です。
一平は、ウキのストックがなくなると、いろいろネットで検索して安いのを探します。
ときどき同じウキなのに、「ここの店は、なんでこんなに高いんだ!」とつぶやくことも少なくありません。
2)ウキの安定性比較
図-1は、ウキの重心位置(羽先端部分からの距離)Xと、ウキに対応する号数のオモリをぶら下げた時、羽の先端部分から水面までの距離Yを図で示しています。
(10号のウキには10号のオモリを、12号のウキには12号のオモリを取り付けています)
表―2 に5種類のウキの重心位置が、いくらの水面下にあるかを調査した結果(X-Y)を示します。
注)
1.Xの数値の%は、ウキの羽先端~重心までの距離ががウキ全長の何%にあるかを示
します。
2. Yの数値の%は、ウキ羽先端~水面までの距離がウキ全体の何%になるかを示す。
(10号錘を付けた時、どれだけウキが水面から出ているかを示す)
3.※は、12号のウキなので錘を12号としたときの距離である。
表ー2 より
- ウキ自体の重心位置は、羽先端から34~54%くらいの位置にあり、BアポロウキとEのカゴ釣り研究会製ウキの重心位置はウキ全体の約1/2の位置である。
- 既定のオモリを取り付けた時(10号オモリ)重心位置が水面下にあるウキは、BアポロウキとEのカゴ釣り研究会製ウキのみです。
(1) ウキの安定性について
ウキは重心位置が下にあるほど安定します。
5種類のウキの中では、Eのカゴ釣り研究会製(10~12号用)ウキが最も水面下にあり
水に浮かべ比較してみると、最も安定性が良いことが解ります。
具体的には、表―2に示した(X-Y)の寸法はCとEのウキでは、図―2と図―3のようになります。
どちらも10号のウキで、10号のオモリを取り付けた場合を想定しています。
赤の楕円部がウキの重心位置で、白い楕円部が水面までの距離です。
図-2に示したCの渚の遠投師製ウキでは重心位置が水面より39mmも上にあるのに対して、図―3のEのカゴ釣り研究会製ウキでは水面よりも48mm下にあります。
CとEは同じようなウキに見えても特性は、大きく異なっているということが解ります。
(2) 5種類のウキについて
A ピアレウキ(PIARE)
12号錘を付けた時のPIAREの12号ウキの Y寸法(水面からウキが出た部分の寸法)は
11.5㎝で、重心の位置は水面より5mm上にあり、少し不安定なことが解ります。
もともと重心位置がウキの羽側に偏っていて(ウキの羽先端から39%の位置)、ウキ全体の重心位置が羽側にあるため安定性は良いとは言えません。浮かべた状態で風を送ってやると、ゆらゆらとよく動くのが見て取れます。
ところが錘を18号くらいにすると、見違えるほど安定性は良くなります。
このウキは、どのような使い方をされても対応できるよう余裕を持って設計されているのではないかと思われます。例えば、飛距離を出すため、カゴや錘を重くしてもウキがしっかり浮くように設計されていると思われます
PIAREの12号ウキは、12号の錘をぶら下げてもまだ残りの浮力が14号分も残っています(表―3参照)。一般の釣りのウキには考えられないことです。
従って、例えば18号の錘をぶら下げてもまだ残浮力は8号分も残ります。
その分、一般の人が使うには過大設計というか、12号相当の遠投かごに12号のウキは大きすぎます。実釣りで、PIAREのウキは12号のカゴを使うときには8~10号くらいのウキで十分です。浮力に余裕があるということは、感度を犠牲にすることになります。
遠投かご釣り用ウキとしては、許されるかもしれませんが、釣り人にはウキの感度が相当鈍く感じられるのではないでしょうか。
B アポロロケットウキ
表―2より、アポロのロケットウキ10号は、10号錘をぶら下げると15cmも水面から顔を出し、羽も8cmと長いのでよく目立ちます。
重心も9mmほど水面下にあり、安定しているように見えます。
しかし、細長く、頭でっかちなウキなので風が吹くと頭部分(羽部分)がゆっさゆっさと揺れます。このウキは、16号くらいのオモリを付けると随分しっかりとして、揺れが小さくなります。
また、88gのオモリ(23.5号相当)でやっと沈みかけるので、10号のオモリを取り付けても、残浮力がまだ13.5号分も残っていることになります。
ピアレのウキと同様に、感度が相当鈍いことになりますが、このウキは胴部分が長く細いのでピアレよりも感度は良いようです。
しかし、遠投かご釣りで60~90mの沖にウキを飛ばせば、細かいウキの動きなど見えませんから、感度はあまり重要でないと思われます。
一平は、あまり目は良くないので、遠くのウキは見にくいのですが、いつもこの釣りばかりしているとウキが遠くにあっても、少し動いただけでも感じることができるようになりましたから、不思議なものです。
アポロロケットウキは、風があるときや潮の流れが速いときは(10号程度のオモリでは)、早く流されるるし、安定性が悪いので、風の弱いときや潮の流れが緩やかな時に使うのが適当と思われます。
安定性を考えるならば、この10号のウキには16号以上のオモリが適当と思われます。
C 渚の遠投師製ウキ(埋め込みなしタイプ)
渚の遠投師製ウキは、羽側に重心位置があるのが特徴です。
表―2より、羽から35%前後の距離に重心位置があります。
図―2より重心位置は、羽の反対側(飛行方向側)にあった方が、カゴと一緒にウキが飛ぶとき後ろに引っ張られることなく、よく飛びます(もちろんこの場合、形状は無視していますが)渚の遠投師製ウキは、これから考えると、重心位置が錘側でなく、羽の方に寄っていますので飛距離を妨げる方向にあります。
しかし、その分ウキの長さは、短くなっています。
このウキは、ウキの先端のA点から重心までの位置は16.4㎝で、PIAREのウキの17.2㎝よりは短く、アポロウキの13.5cmよりは長くなっています。
また、このウキは重心位置が水面から3.9㎝も上にあるにもかかわらず、AやBのウキより安定性があります。これはウキが太く、短いため揺れが少なく、安定性も良いのだと思われます。またこのウキの残浮力は、12.4号でした。
D 渚の遠投師製ウキ(埋め込みタイプ)
Dのウキは、埋め込みタイプなのでさらに全長が短くなって、22.6㎝です。
従って、A点から重心までの距離はさらに短くなって14.5㎝となりました。飛距離を出すには有利な形です。
残浮力は15.5号で最も大きくなっています。ずんぐりむっくりタイプなので、このウキは
波がうねってもそれほど影響を受けないことを目指したウキの様です。
E カゴ釣り研究所製ウキ(10~12)号
一平は、大きな水槽に写真―2に示す5種類のウキを浮かべて、実験をしました。
それぞれ錘を付けて、水に浮かべてみると、明らかにEのカゴ釣り研究会製のウキが一番安定していました。重心位置は、水面下4.8㎝と他のウキに比べて、断然下なので当然と言えば当然ですが、あまりの違いに、少々びっくりでした。
また、浮力のバランスも、ウキの上部が丸く大きくなった形状で、安定性の条件を満たしています。残浮力は、他のウキに比べて少なく7~9号分でウキの感度も良いと思われます。
3)まとめ
今回の実験は水道水で行いましたが実釣りは海水なので、例えば20℃で2.5%程度浮力はアップしますが、影響は小さいと思われます。
1) 遠投かご釣り用のウキは、大きくて、残浮力が非常に大きい。この理由は
① オモリに加え、天秤、サルカン、針などが加わるため。
② 遠投するため、道糸の重みがウキに加わる。
③ 潮流には下向きの流れがあったり、棚が深くなると余分な力が加わる。
④ 大きいウキはどんな使われ方をされるか分からないので、メーカーは意図的に余裕
を持たせて販売している。
などが考えられます。しかし、それでも釣れますから、残浮力については、それほどシビアに考える必要はないような気もします。
また、①②③をあわせて、オモリ2号分程度を考えておけば良いと考えています。
・A:ピアレのウキ
飛びを重視し、重いカゴやオモリで投げられてもウキがしっかり浮くことを考慮し
て作っていると思われる。その分感度は鈍いと考えられる。
実釣りでは、10号のウキには12号か15号用のカゴを使うくらいでちょうど良いと思われる。このウキは、作りはしっかりしていて出来栄えも精度も良いが、高価なのが欠点である。
・B:アポロロケットウキ
細長く羽が大きく、頭でっかちなウキなので、よく目立つ。しかし、ゆらゆらとよく
揺れるので、オモリを規定値よりも重くするか、風の弱い時や波のうねりが少ないと
きに使うのが良い。
・C、D:渚の遠投製ウキ
ずんぐりむっくりタイプで、残浮力も大きいので安定性を重視したウキです。波のう
ねりが高いときや、風の強いときのウキと思われます。このウキもおもりを規定値よ
りも重くして使った方が良いかもしれない。
なんといっても、作りも良く安価なのが魅力です。
・E:カゴ釣り研究会製ウキ
安定性もあり、残浮力も他のウキに比べて断然小さく、5つのウキの中では一番バラ
ンスの取れたウキだと思われます。ただし、一平は、波のうねりが高いときに使った
ことがありますが、遠くのウキが見えたり、見えなくなったりしたのを経験しました。
水面上にあるウキの長さも9㎝と5つのウキの中では一番小さいので、少し波の高
いときは、このウキは使わないで渚の遠投製ウキを使います。
以上が今回の報告ですが、次回は5種類のウキを、何度も試し投げをして飛距離の比較を
した結果を報告したいと考えています。
コメント
一平さん ごきげんよう。
私は遠投ロケットカゴ釣りのウキについては自作派です。
スピニングリールで遠投するためにPEラインを使用しており、羽根ウキが
回転することで、PEラインがウキ環や軸に巻き付くのを防ぐ必要があるため、
自作で大きな回転羽根タイプの遠投ウキにして、100ⅿでも見えやすいウキを
実現して使っています。実釣では投点70~80ⅿを流しています。
自作する理由は、何と言っても材料単価100円~150円程度で作れるからです。
軟質発泡材を浮力に使うと、特殊な工具も必要無く、誰でも簡単に作れます。
一平さんも自らの釣りスタイルに合う自作ウキに挑戦してみてはどうですか。
久しぶりですね。お元気ですか。
今まで新しいウキを使うのが楽しみで、いろいろなウキを試してきました。
そろそろ自作もいいですね。しかし、今までのウキがいっぱいありますから
それらを使ってからにします(笑)
初めまして、アメーバブログで『カゴ釣り日記』を掲載しております神奈川県横浜市の『hiji』と申します。
以前にも、拝見させてもらいましたが、研究熱心で驚きました。
江ノ島、伊豆半島では両軸リールのカゴ釣りは非常に盛んです。
浮き(自分の場合本体と羽根脱着型)、カゴ(ステンレス一発カゴ、イレクターカゴ)、天秤は皆さん自作しています。
自分もいろんな竿を使いましたが、剛弓53BとABUロケット6500の同じ種類を2,3セット同じものを所有するに落ち着きました。
今後とも、宜しくお願いします。
カゴ釣りの盛んな関東の方からコメントをいただいたのは初めてです。
遠投かご釣りの竿やカゴの記事など読んでいただいているようで嬉しい限りです。
こちらこそよろしくお願いします。一平