1.新しい遠投カゴの開発
こんにちは! 一平です。
前回(第69回)は、「魚への負荷は軽く、飛距離も出る」新しい遠投カゴを試作し、紹介しました。
オモリは軽い方が良く釣れます。しかし、遠投かご釣りで、遠くにカゴとウキを飛ばすには
オモリは重い方が良く飛びます。
この相反する2つの事柄を解消するため、具体案として
・カゴに水(海水)を入れて投げ、海中ではカゴの中に海水が入ってきてその重さはなくなる「水遠投カゴ」を試作し、紹介しました。
第70回は、新しい「水遠投カゴ」を使ってみた結果
・魚の食い付き状況
・カゴからの水漏れ
・カゴの飛距離
・注意すべき点、改良点
等について報告したいと思います。
2.魚の食い付き状況調査
新しい「水遠投カゴ」(写真ー2に示す)を使った時の、魚の食い付き状況を調査するため、2021年12月24日(金)に平磯海釣づり公園に出かけました。
今日の目的は主に調査ですが、もちろん釣果も狙った欲張りの一石二鳥作戦です。
ゆっくり出かけ、釣り開始は午前11時半ごろからです。
釣り始めてから1時間くらいしてから、エサがしょっちゅう取られ始めました。
ウキの動きは、ほとんどなくエサだけが取られるという状況でした。
よく観察していると、ウキはかすかに動いている感じですが(遠くなので非常に見ずらい)、沈むわけでもなくゆっくりと潮に乗って西方向へと流れていきます。
ときどき竿をしゃくって上げますが何の反応もありませんでした。
これを30~40分ほど繰り返した後、新しい「水遠投カゴ」に交換して投げてみました。
すると1~2分後にウキが沈みました。とっさに合わせてみるとなんだか掛かっているような、いないような感じです。釣れた魚は、なんとわずか5㎝位のイスズミでした。
遠投カゴ釣りを平磯海釣づり公園で始めて6年以上になりますが、遠投カゴ釣り仕掛けでこんな小さい魚を釣ったのは初めてです。心の中で「やったぞ!」と叫びました。
こんなに小さい魚を釣って嬉しかったのも初めてでした。
60~70m沖に仕掛けを投げて、釣れた魚が5㎝では「お笑い」ですが、逆に水遠投カゴの威力を実感することとなりました。
しかもこれだけでは終わりませんでした。仕掛けを再度投入後2~3分後にまたウキが沈みました。
今度は5㎝位のチャリコでした。チャリコは遠投カゴ釣りでよく釣れますが、しかし最低でも10㎝位はありました。こんなに小さいのは、これもまた初めてでした。
針はいつもの伊勢尼7号、ハリスは3号でした。
新しい「水遠投カゴ」は、飛距離アップと同時にウキの感度をアップし、魚の食い付きを良くするために考えたものですが、
調査前は正直なところ半信半疑でした。
しかし、結果は期待以上というより驚愕でした。
もちろん「偶然」だったのかもしれませんので、今後も調査は必要です。
しかしながら、従来の方法では30分以上も何かがエサをつついている様子はありましたが魚は釣れませんでした。ところが水遠投カゴを使った途端、小さい魚がウキを沈め、それに合わせた結果、すぐに2回とも魚が釣れたのです。
この水遠投カゴは、アタリが良く分かります。しかし感度が良くなった分、仕掛けを回収する回数が増え、リールを巻き上げてくるのが大変でした。
感度が良くなれば良くなったで新しい問題が出てきました。
10m~20mのチョイ投げで釣りをしているのではありません。ちょこっと引いただけでその都度、70mの沖からリールを巻いてくるのは大変です。このことを改めて痛感させられました。
一平の使っている両軸リールはアブの6500CLです。このリールは、安価で飛距離も出て耐久性も良い素晴らしいリールですが、一回転当たりの最大巻取り長さが65㎝と少ないので、沖の遠方からカゴや大きなウキを巻き上げてくるのに時間がかかるのが難点です。リールの変更を考えなければならないかもしれません。
しかし、水遠投カゴの威力を実感した素晴らしい日となりました。
まだ1日だけの結果ですが、これからも時々検証してみたいと思っています。
3.新遠投カゴの水漏れについて
(1) ストッパーの違いによる水漏れ
カゴに水を入れて、重くして投げるのですから、投げる前にカゴから水漏れがあっては目
的を達成することができません。もちろん少々の水漏れは問題ありませんし、カゴを投げてカゴにエネルギーを与えた後では、水漏れは特に問題ありません。
当初一平は、投げる前からの「水遠投カゴ」からの水漏れを心配していましたが、投げる
直前も投げた直後も「水遠投カゴ」からの水漏れは、ほとんどありませんでした。
しかし、ストッパーの形状によっては、漏れる場合があります。
それを、図―1~図―4で説明します。
図―1のA,Bはストッパーです。同じようなストッパーですが、Aはほとんど水漏れはありませんが、Bはどんどん水漏れします。(もちろんA,Bのサビキカゴの穴は塞いだ状態と考えてください。
実際にA,Bのストッパーを使って試作し、水漏れを確認しました。
図―2は、ほとんど遠投カゴから水が漏れない例です。
しばらく手で持っていても、水がこぼれることはほとんどありません。
図―3は、Bのストッパーを使っていてカゴ内の水が、芯棒を伝わってどんどん
漏れている状況を示します。
この違いはどこから来るのでしょうか。
Bストッパーの穴径は大きいので、水漏れが多いのは当然ですが、Aストッパーは水漏れしませんでした。
ストッパーの選定ミスで、雲泥の差が出てしまいます。Bのストッパーでは使い物になりませんね~
そこで、もう少し具体的に考えてみました。
図―4に水遠投カゴの下部の構造を示します。
図―4に示す水カゴ内の水が漏れる場合、水は①(芯棒と水カゴの隙間)、②(ストッパ
ーと水カゴの隙間)、③(ストッパーと芯棒の隙間)を流れます。
芯棒の直径は1.6mm,水カゴ先端の穴径は2.5~3.0㎜です。
Aストッパーの場合は、
Aストッパーの穴径は約1.6㎜で、芯棒の径(1.6㎜)とほぼ同じです。
Aストッパーと芯棒は隙間がありませんので③の方向へは、水は流れません。
水は、②の方向へ流れようとしますが、水カゴとオモリとカゴ内の水の重さで、水カゴがス
トッパーに押し付けられているので、カゴが垂直に立っている限り水は漏れません。
Bストッパーの場合は、
Bストッパーの穴径が約3mmmもあるので、径が1.6㎜の芯棒との間に隙間ができて、ここ
からどんどん水は③の方向へこぼれ落ちていきます。
また、Bストッパーの材質はプラスチックであるためか、②方向からも漏れていました。
従って、ストッパー選定に当たっては、
・材質をできるだけゴムのようなクッション材を使い、
・穴径と芯棒の径を同じか、ストッパー径をやや小さくすることが重要です。
それならば、水カゴ、ストッパー、芯棒をすべて接着してしまえばよいではないかと思われ
ますが(もちろんこれも一案ではありますが、)よほど強固に接着しないと、カゴ着水時に
壊れてしまいそうな気がします。また、せっかく苦労して作った水遠投カゴの底部を、接着
剤でごたごたに接着してしまっては商品価値が半減しますね~
(2) 遠心力による水漏れ防止効果
また投げるときに、カゴから水が漏れる心配があります。
5~6mの竿を力を込めて振り抜きカゴを投げるのですから、カゴとカゴの中の水は相当
強い遠心力を受けます。
この時、水カゴ先端部は強い遠心力によりストッパーBに押し付けられ、②方向への水漏れ
はなかったと考えられます。
飛行途中の状況は確認できませんが、少なくとも竿を振った直後に、水漏れは確認できませ
んでした。もちろん頭から水をかぶったことは一度もありませんでした。念のため(笑)
4.新遠投かごの飛距離について
表―1に新しく開発した「水遠投カゴの仕様」を示します。
A,Bは、試作した水遠投カゴで、Cは一平が良く使っている遠投カゴ(SANNAカゴを少し改
良したもの)です。
A,B,C,カゴの重量は 59g、65g、78gです。 A,Bは16g、23gの水を入れるので、
投げるときの重量は A=75g(20号)、B=88g(23.5号)、C=78g(20.8号)です。
またそれぞれの水中でのカゴの重さは、A=25g(6.7号)、B=29g(7.7号)、C=43g(11.5号)です。
表―2に、A,B,Cカゴの遠投結果を示します。
AとCの遠投カゴの重さは、75gと78gでほぼ同じです。これで比較しますが、
水遠投カゴの特性をつかむため10gほど重いBカゴ(88g)も比較しました。
遠投した時の条件
1.時々横風及び追い風が吹いた。
2.竿はシマノ遠投EV520RP、リールはアブガルシア6500CL、道糸ナイロン6
号、天秤4g(自作)を使用した。
3、両軸リールの設定は遠心ブレーキ1個とし、メカニカルブレーキはそこそこに設定
し、できるだけ一定の力で投げた。
4.距離測定は、道糸に60m~80mの間5m間隔でにウキ止め糸を取り付け、おおよ
その距離を測ると共に、レーザー距離計「ファインキャディJ300」で測定した。
表ー2より
- AカゴとCカゴの重量は75g、78gでほとんど変わりませんが、平均飛距離は
71mと80mとなり、9mもの差がありました。Cカゴは水カゴ部分の容積が増え、しかもその中には比重の軽い水が入っていたために飛距離が落ちたものと思われます。 - Bカゴは投げるときの重量が88gもあったにもかかわらず、78gのCカゴよりも、平均
飛距離で約3mほど低下しました。これも上記と同様の原因が考えられます。 - これらより水遠投カゴの飛距離は、従来の市販の遠投カゴより低下することが解りました。これは今後の検討課題ですね~
従来と同等の飛距離を出そうと思えば、約90g以上の水遠投カゴを使う必要があります。または、魚への負荷を1~2号分上げて7~8号とすれば、距離は相当改善されそうです。
5.注意すべき点、今後の改良点
テストした結果、以下の(1)~(3)点が問題と思われます。
(1) 手返しの悪さ
一平の遠投カゴ釣りにおける遠投直前のルーティンは、図―5、図―6に示す通りです。
手順は、①針にシラサエビを付け、②カゴを持ち、③ラッパ型投入器を持ち、④これに網ですくったマキエを入れ、⑤エビを遠投かごに詰め、⑥エサの付いた針を入れる、です。
(シラサエビ投入器は第52回で報告したとおりです。)
この手順は、慣れているので意外と早くて約5~6秒です。
ところが、新しい遠投カゴを利用する場合には、これらの動作に加えてカゴの水入れボックス部分に⑦水を入れる動作が(これを図―7に示します)加わります。これで3~5秒程度かかります。
しかも、水を入れるときは上下のカゴが落下しないように手で支えることが必要です。
(マキエのこぼれるのを防ぐため)
合計①~⑦の動作にかかる時間は10秒程度ですが、今までのルーティンに慣れているせいか、1つの動作が加わっただけで意外と面倒に感じます。
水を入れる時間は仕方ないとしても、水を入れるときのカゴを支える動作を無くするか、
簡単にする工夫は、今後必要かもしれません。
なお、水遠投カゴの内部カゴ(水漏れ防止用)は、サビキカゴの先端部を利用していますのでもともと4個の穴が開いています。このうち3個の穴をふさぐと水がカゴに満水となるのに約25秒以上もかかります。2つの穴とすれば約12~13秒、3個の穴を開けると3~5秒です。従って穴は3個開けています。
(2)飛距離の低下
やはり重量が同じでも、比重の大きい塊(体積の小さい)を投げる時に比べて、水の
入ったカゴを投げる時では表―2で示したように飛距離は低下します。
できるだけ飛距離の落ちないような形状等を考える必要がありそうです。
また例えば、従来と同等の飛距離を出そうと思えば、現在使用している75~80gの
カゴの代わりに約90g以上の水遠投カゴを使う必要がありそうです。
また「水遠投カゴ」の中に入れているオモリ7号を9号とし、オモリの重さを7~8g
(オモリ2号分)増やし、カゴの中の水の量を減らせば(その分、水中での重さが重くな
り、魚がエサをくわえた時の負荷は大きくなりますが)飛距離は改善されると考えられま
す。
(3)沖からのカゴ回収手間と時間について
2.の魚の食い付き状況調査で述べたように、少し魚が引いただけで約70mの沖から
リールを巻いて仕掛けを回収するのは大変です。
1回転当たりの最大巻取り長さの大きいリールを使うとか、魚の食いの悪い時だけこの
カゴを使う工夫も必要かもしれません。
上記の(1)~(3)の問題点はありますが、実用的には当初の目的「魚への負担は軽く、飛距離も出る」カゴは、十分達成することができました。
しばらくこの「水遠投カゴ」を使ってみるつもりです。
しかし、残念なことに今は3月ですので、真鯛釣りはまだまだ先です。
6月が待ち遠しいですね~(笑)
新しいカゴの材料選定で、釣り具屋、ホームセンター、ダイソー等を回り、試作品を作り、今までのカゴと飛距離などを比較した後、実釣りにも使ってみて、完成したカゴの問題点を整理し、まとめるのに結構時間がかかりました。(第69回、第70回)
次に報告できるのは、また1か月くらい先になりそうです。
次回は、比重が1に近いプラスチックを使った
「魚への負担は軽く、飛距離も出る」新しいカゴの開発、第2弾に挑戦します。
このカゴは、水をカゴに入れる手順がないので、今まで通りの手順で遠投ができるのがメリットです。
2022年3月